この事例の依頼主
30代 男性
相談前の状況
ご相談者様は,飲食店を経営する法人の代表者でしたが,コロナ渦で売上が減少してしまい,2か月ほどで資金ショートしてしまうような状況でご相談に来られました。事情をお伺いしたところ,法人について破産を申し立てるには手元資金が十分ではない一方で,飲食店は口コミ評価が高かったため,飲食店事業を第三者に事業譲渡して手元資金を用意して破産申立てを行うという方針で進めることにしました。また,ご相談者様自身についても,法人の連帯保証人になっていたことから債務整理が必要な状況で,諸般の事情により,破産を申し立てることになりました。
解決への流れ
飲食店事業の事業譲渡については,無事に引取先が見つかり,従業員や取引先も引き継いでもらえることになりました。事業譲渡後速やかに破産を申し立て,その後,1年程度で無事に配当を行って手続が終結しました。また,ご相談者様についても,法人と並行して破産手続を進め,同じタイミングで無事に免責を受けることができました。
ご相談者様は,法人の代表者として,(それまでお世話になった)従業員や店舗のオーナーに迷惑をかけたくないという思いが人一倍強い方でした。そのため,従業員やオーナーに迷惑がかかる単純な破産は、できるだけ避けたいという事情がありました。幸い、事業譲渡先が迅速に見つかり、その後の破産手続でも問題視されない形で事業譲渡が実行できましたが、その過程は紆余曲折があり、非常に難しい事案だったと思います。また、ご相談者様については、経営者保証ガイドラインの利用も考えられましたが、ガイドラインを使用するのに妨げとなる事情が多かったため、やむなく破産を選択しました。もっとも、現在の実務は、可能な限り経営者保証ガイドラインを利用した債務整理を行うというのが主流の考えであり、最初に経営者保証ガイドラインの利用を検討したほうがよいということができます。このように、破産申立ても、弁護士の知識や力量によって大きく結論が左右される分野です。特に法人やその代表者の破産については、専門的な知識を持つ弁護士に依頼することが重要ということができます。