犯罪・刑事事件の解決事例
#不当解雇

営業成績や勤務態度の不良を理由に解雇されたが、これに対する慰謝料請求をしたところ、会社に150万円の支払い義務が認められた事例

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小沢 一仁 弁護士が解決
所属事務所インテグラル法律事務所
所在地東京都 千代田区

この事例の依頼主

30代 男性

相談前の状況

営業成績が上がらない、外回りを予定通り行わない、上司に対して反抗的な態度をとるなどを理由に、会社から解雇をほのめかされており、ついに直属の上司とともに社長と話し合いをすることになった。この話し合いで正式に解雇を通知される可能性が高い、どうしたらよいかとの相談を受けました。

解決への流れ

まず、呼び出された場所が社長室であったことから、密室であるため、会話内容の証拠化が必要でした。そこで、私は依頼者に対し、打ち合わせ時の会話内容を秘密録音するように指示しました。依頼者は、秘密録音はアンフェアであり、後々これをとがめられて証拠化できなくなるのではないか、事前に断りを入れてから録音すべきではないかなどとおっしゃられていましたが、民事訴訟においては原則として証拠能力に制限はないこと、秘密録音が証拠能力を否定される場合とは、例えば監禁して無理やり有利な供述を引き出し、これを録音したような場合に限られること、そもそも証拠の残りにくい密室での面談をすることについては、相手方がアンフェアであることなどを説明し、秘密録音を実行してもらうことにしました。打ち合わせの内容は、案の定解雇通知でした。しかし、話し合いの席において、社長や上司が明らかに不合理な解雇理由を述べていました。事後的に解雇理由書の交付を求めましたが、同理由書に記載されていた解雇理由は、上記打ち合わせ時に社長らが述べた解雇理由とは全く異なる、外形上もっともらしい理由を述べるものでした。本件のような事案では、解雇の無効を争いつつ、その間の賃金を請求することが一般的かと思いますが、本件では依頼者の意向により、解雇については争わず、慰謝料と逸失利益(解雇されずに勤務を継続していたのであれば得られたであろう賃金1年分)を請求しました。しかし、相手方はこれに応じなかったことから、裁判所に訴訟を提起しました。このとき、労働審判の申立ても検討しましたが、時間がかかっても主張すべきことは主張し、相手方の主張に対しては十分な反論をしたいとの依頼者の意向を受けて、訴訟提起に踏み切りました。訴訟では、裁判所が当方に寄った心証を持ち、終始当方寄りの訴訟指揮をしてくれました。その結果、裁判所からの和解の提案により、相手方が当方に対し150万円を支払うとの内容で和解が成立しました。

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小沢 一仁 弁護士からのコメント

本件を有利に進めることができた原因は、やはり秘密録音をしたことにあります。秘密録音の是非については意見が分かれるところだと思いますが、特に本件のように、当事者間に力の差があるような場合では、ひとつでも有利な証拠を確保する必要があること、裁判例においても、秘密録音の証拠能力が否定されるのは、例外的な場合に限られると位置づけられていることからすると、秘密録音は積極的に活用すべきだと私は思います。和解金については、当初想定していたよりも50万円以上高額となりました。これも、音声を録音することで、どのような会話の流れで、どのような口調で会話がされていたかということを裁判所が直接感じることができたことが影響しているのではないかと思います。労働者側には、会社から解雇通知がされた後にこれに異議を述べるのみではなく、解雇通知がされそうだと感じたときや、実際に解雇通知がされたときには、会社に立ち入ることができる間にできる限り多くの証拠を保全し、自己防衛をする意識を持つことも必要であると思います。