この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
被相続人であった御依頼者様のお母様と長年同居し、その財産の全容を把握しているはずの長男の代理人から遺産分割協議書へのサインを求められた御依頼者様でしたが、それまで長年にわたって色々な機会で聞いていた話からすると明らかに遺産の額が少ないと感じており、長男代理人が示す遺産分割協議書の内容に違和感を感じて、なかなかサインをする気持ちになれない中、私のところに御相談にいらっしゃいました。
解決への流れ
御依頼者様とは、遺留分についての争いであることを確認し、調停は必須ではないものの、話合いで解決できるのではないかとの希望もあり、またその方が穏便に、時間をかけずに解決ができるとの思いもあって、まずは遺留分侵害額調停を申し立てることになりました。ただ、調停期日が3回実施される中でも、相手方の露骨な遺産隠しの姿勢が変わることはなく、裁判官の相手方に対する働きかけも弱々しく頼りにならなかったことから、到底御依頼者様の考える遺産が明るみになりそうにはない状況であったため、結局のところ調停を不成立としてもらうことになりました。その後、訴訟に移行することで、裁判官から相手方に対して相続税申告書類やその他遺産の全容を把握するために有益な証拠となり得る書類の提出を求める訴訟指揮があり、相手方代理人もそれには素直に応じていったたことから、御依頼者様の当初想定していた遺産額には到底及ばなかったものの、結果として1,500万円超の遺留分が認められ、御依頼者様がその結果を手にする形でなんとかプラスの方向で遺留分侵害額訴訟を終えることができました。
調停での解決が可能であれば、その分時間や労力、お金を節約することができますし、その後の親族関係ももしかしたら交際が復活するなどという副次的な良い結果もあるかもしれません。ただ、調停には相手の任意の協力が不可欠であり、頑なな相手方であることが明らかな場合には、離婚のように調停前置が法律上必須ではない今回の遺留分侵害額訴訟のような場合には、最初から訴訟を提起するというのも、逆に時間、労力、お金の節約のために効果的でそれを考えておくべきかもしれません。相手方の性質等については長年のお付き合いがある御依頼者様の方がよく分かっているはずですので、訴訟戦略を立てていく際に、弁護士と積極的にコミュニケーションを取って相手方についての情報を共有し、時間、労力、お金をできるだけ節約しつつもより有利な結果を手にするという「良い」解決を手にするために、どう動くべきかよくよく弁護士と相談することが肝要ではないかと思います。