この事例の依頼主
30代 女性
相談前の状況
私は、夫の不貞が原因で協議離婚をし、その際、夫から離婚慰謝料として、総額300万円を支払ってもらう旨の公正証書を作成しました。不貞相手の女性は、夫が既婚者であることを知りながら交際していましたので、私は彼女にも責任を取ってもらいたいと強く思い、弁護士に相談したところ、「夫から慰謝料として300万円払ってもらえるのであれば、不貞相手にはもう請求できない」と言われてしまいました。しかし、私はあきらめることができず、こちらの先生に相談しました。
解決への流れ
こちらの先生の見立てでも、私と夫の婚姻生活の様子や、不貞の態様等からすると、夫から300万円の離婚慰謝料を払ってもらえることになっている以上、損害の賠償としては十分な額であり、やはり別途不貞相手の女性にも慰謝料を支払ってもらうことは難しいだろうとのことでしたしかし、何とか不貞相手の女性に少しでも自分のしたことを反省してもらうという意味で、夫が私に対して負っている慰謝料支払債務を、彼女に保証してもらうのはどうかという提案を受けましたので、そのための交渉を依頼することにしました。その結果、夫が私に支払う慰謝料の一部についてですが、不貞相手の女性が保証をする旨の合意を成立させることができました。
不貞をした配偶者と相手方には、他方配偶者に対する共同不法行為(民法719条)が成立します。この場合、不貞をされた配偶者は、不貞をした配偶者及び相手方に対し、それぞれ慰謝料を請求することができますが、仮にどちらか一方が、十分な慰謝料を払ったと認められる場合には、もう片方にはそれ以上慰謝料を請求することができないのが原則です。上記解決例の場合、相談者は離婚した夫との間で、慰謝料として300万円を支払ってもらう旨の合意をしており、公正証書も作成していました。相談者のケースでは、300万円なら慰謝料として十分と思われましたので、仮に不貞相手の女性に慰謝料を請求したとしても、訴訟では認められない可能性が高く、任意の交渉でも、女性が支払いに応じるとは考えにくい状況でした。ただ、夫からの慰謝料は、分割払の約束になっており、相談者がすぐに全額を得られるというわけではない点に、若干の不安がありました。そこで、その点に着目し、不貞相手の女性に別途の慰謝料を請求できないまでも、夫が相談者に対して負っている慰謝料支払債務の保証人となってもらうことで、不払いのリスクを担保し、かつ、自分がしたことの責任を感じてもらうことを提案しました。その後、相手方との間で、その方針に従って交渉した結果、慰謝料の一部についてですが、保証契約を締結することができました。