ママタレントとして人気の藤本美貴さんが、8月18日放送の日本テレビ系「しゃべくり007」に出演し、夫でお笑いコンビ「品川庄司」の庄司智春さんとの子育てについて語り、話題になっています。
藤本さんと庄司さんは3人の子どもを育てており、藤本さんは、どうしても夫婦で話し合わなければならないときには、子どもの前でも夫婦喧嘩をすると明かしました。
ただし、その際は「あなたたちに怒っているわけじゃない」と理由を説明しているといいます。
背景には「人の顔色を見られる子どもになってほしい」「空気を読める子どもになってほしい」という思いがあるとのことです。
一方で、子どもの前での激しい夫婦喧嘩は、児童虐待にあたる可能性があります。どのような点に注意が必要なのでしょうか。玉真聡志弁護士に聞きました。
●人格否定を伴った罵倒を繰り返すほど「児童虐待」に
──子どもの前での夫婦喧嘩は「児童虐待」になる?
子どもの前での夫婦喧嘩は、内容や態様によっては「児童虐待」にあたる可能性があります。
児童虐待防止法は、「児童虐待」について、「児童に対する著しい暴言」「著しく拒絶的な反応」のほか、「児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力…その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと」と定義しています(同法2条4号)。
夫婦喧嘩の際に、一方が怒りに任せて手を出せば、有形力の行使として「暴力」になります。叩く、殴る、蹴るなどの様子を子どもが目撃すれば、児童虐待にあたり得ます。
また、子どもの目の前で激しく罵倒し合うことも、子どもに強い心理的ショック(著しい心理的外傷)を与える可能性が高く、児童虐待と判断される場合があります。
声を荒げたり、人格否定を伴った罵倒を繰り返すほど、児童虐待に該当する可能性は高まります。
罵倒の応酬では、大抵声量が大きくなったり(相手への威圧、近隣に聞こえる大声など)、人格非難のような言動が多かったりするため、「児童虐待」と認定されやすくなります。
自戒を込めて申し上げるならば、難しいことですが、お互いに冷静になり、建設的な協議を心がけるべきだと思います。
●冷静な対話を心がけることが大切
──児童虐待防止法の「児童虐待」と判断されないケースでも、自治体のガイドラインなどに抵触する可能性はあるのでしょうか。
多くの自治体は、児童虐待防止法の定義を採用しています。同法が想定する「児童に著しい心理的外傷を与える言動」があれば、児童虐待と判断されると思います。
ただし、実際に児童に心理的外傷が生じたかどうかの判断は難しく、明確に線引きできないケースも少なくありません。
このため、一部の自治体では、子どもの前で夫婦間の口論が起きたら、ただちに児童虐待があったとみなして、行政や警察が対応に入るケースも少なくないのではないかと思います。
──どうしても夫婦間で意見の対立が生じ、子どもの前で議論せざるをえない場面もあると思います。その際に「虐待」と受け取られないために、どのような点に注意すべきでしょうか。
夫婦間の口論、特に激しいやり取りは、子どもに強い心理的ショックを与える可能性があります。
言うは易く行うは難しですが、意見が対立しても罵倒や人格否定に走らず、問題解決を目的とした冷静な対話を心がけることが大切です。子どもの前だからこそ、相手をパートナーとして尊重し、穏やかで建設的な話し合いを意識する必要があります。