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東京は「都合のいいATM」か? 「国に6兆円奪われた」都が不公平を訴え
2018年12月01日 10時08分

東京都は恵まれている、税収が豊富にあるんだから文句を言うなーー。税金の話になると、とかく矢面に立つことが多い東京都。確かに、日本を代表する大企業のみならず、数多くの企業が集積する首都で人口も群を抜いて多く、巨額の税金を集めている。2017年度の税収は5兆円だった。

とはいえ、都民が納めた税金が他の地方に送られる一方では「税の偏在」問題は根本的に解決しないとして、東京都がネットを使って「税の不公平」を訴える啓発戦略を続けている。11月下旬、東京都財務局主計部の担当課長にねらいを聞いた。

東京都は恵まれている、税収が豊富にあるんだから文句を言うなーー。税金の話になると、とかく矢面に立つことが多い東京都。確かに、日本を代表する大企業のみならず、数多くの企業が集積する首都で人口も群を抜いて多く、巨額の税金を集めている。2017年度の税収は5兆円だった。

とはいえ、都民が納めた税金が他の地方に送られる一方では「税の偏在」問題は根本的に解決しないとして、東京都がネットを使って「税の不公平」を訴える啓発戦略を続けている。11月下旬、東京都財務局主計部の担当課長にねらいを聞いた。

●これまではわかりやすい情報発信が不十分

ーー東京都ではネットなどを活用して「都民の税金が30年間で6兆円、国に一方的に奪われ続ける」(http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/zaisei/syutyou/tomin_zeikin.html )などと、発信していますね

「小池知事は、都民に伝えることが大事だという認識です。我々は、税への関心・知識がある有識者への説明はこれまでも続けてきていましたが、わかりやすく伝えるところで足りない部分があるというのが反省点でした。そこで、国や専門家向けの情報発信は続けつつ、税金を納めてくれている都民に対し、わかりやすい情報提供を強化しようと考えました」

ーーこうした発信により、どんな効果があったと認識していますか

「都の税金に関して、『こういう問題があることは知らなかった』という電話や『そうは言っても東京にはいろいろ集中しているだろう』という批判の電話もいただきました。賛成だけじゃなく、批判の声もいただくだろうということはわかっていました。この問題について賛否はどうあれ、認識されリアクションが増えたということは成果だと感じています」

●交付税を加味したら「都は全国32位」

ーー東京都は、同じ地方自治体のなかでも「裕福な自治体」として妬まれ、場合によっては孤立することもあると思います。実際どうでしょうか

「税の偏在をどうするかという問題については、確かに利害は対立しています。ただ、税ではない別の政策に関する部分では、問題意識をかなり共有できていると思います。

住民ひとりあたりの地方税収(2015年度)が比較され、東京都(18万7000円)は全国1位で、最も少ない沖縄県(7万5000円)の2.5倍になっていると言われることがあります。ただ、地方税と地方交付税を足した実態ベースで比べれば、交付税がもらえない東京都は18万7000円で全国32位となり、例えば沖縄県は21万9000円に上がります。

全国平均は18万3000円となりますから、東京都はおおむね全国平均と同水準です。交付税でならされているのが現状で、ある特定の指標に頼って全体を論じるべきではないと考えています」

ーー東京都は「不交付団体」で交付税をもらっていないですが、確かに他の自治体の多くはもらっていますね

「はい。交付税というものは対処療法的で問題が大きいと考えています。つまり、自治体は本来なら自主財源を確保して自治体運営をしていくべきで、そのために地方創生などを進めていくべきだと思うのです。この交付税を続けていると、交付税に頼る状態から抜け出せないのではないでしょうか。

また、政府はここ数年は景気の回復局面が続いていると言っていますが、不交付団体の数が戻っていないのです」

●都の税収、1兆円下がったことも

ーーそれはどういうことでしょうか

「141だった不交付団体の数が、2008年のリーマンショック後に42まで減りました。それが2017年度では76と、まだリーマン前の水準に戻っていないのです。

交付税でしのいでいくのではなく、自立した財政運営が可能な自治体を育てていかないと、この先どうなってしまうか心配です。交付税という、国からの財源保障が前提となっていてはまずいと思うのです」

ーー東京都の税収にはどのような特徴がありますか

「東京都は税収に占める法人二税(法人事業税と法人住民税)の割合が高く、法人二税に依存しています。そのため好景気だと税収が大きく上がり、不景気だと税収はガクンと下がります。リーマンショックの影響で税収が1兆円下がったこともありました。ジェットコースターのようなものです。

そのため、基金を積み立てて不測の事態に備えていますが、そうすると『溜め込みすぎだ』という批判も受けます。どうか景気がいい時ばかりで判断しないでほしいと思います」

ーー今後、都はどのような情報発信をしていきますか

「やはり、都民の税金がどのように使われているのか、税金はどう偏在しているのかなどをわかりやすく伝えることを継続していきたいと考えています。新聞やテレビからこの問題で取材を受けることは少なくないですが、どうも難しい問題で面白くないと思われるのか、あまり取り上げてもらっていません。ですが、大事な問題なので発信を続けます」

<「まるで都合のいいATMじゃないか!」など東京都の主張の一部>

・30年間で国に奪われた税金は6兆円

・6兆円あればオリンピックは4回以上開け、都営大江戸線は4本以上建設できる

・年間平均の2000億円あれば、保育所を600以上整備できる

(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama

(弁護士ドットコムニュース)

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