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「妻が痴漢された」警察官の夫が現行犯逮捕 SNSは「管轄を越えた美談」と賞賛 法的には?
2025年08月22日 12時42分

妻から痴漢被害の相談を受けた警視庁の警察官が、公休を取って妻の通勤に同行し、容疑者を現行犯逮捕したという報道(朝日新聞、8月21日)がありました。

逮捕されたのは37歳の会社員の男。神奈川県警に勤務する女性職員が4月頃から繰り返し被害に遭っていたことから、夫である警察官が、公休をとり妻の通勤に同行、男を犯行現場で取り押さえたそうです。

ネットでは「管轄の境を越えた美談」などと、妻を救った夫の行動を賞賛する声が上がっています。

警察官が、自分の家族の被害に対して警察官として逮捕を行うことはできるのでしょうか?また、犯行現場は東急東横線横浜駅だったことから警視庁勤務の夫の管轄外と思われますが、管轄外でも警察官が逮捕しても問題ないのでしょうか? 

よくよく考えるとちょっと難しいこの問題について、簡単に解説します。

妻から痴漢被害の相談を受けた警視庁の警察官が、公休を取って妻の通勤に同行し、容疑者を現行犯逮捕したという報道(朝日新聞、8月21日)がありました。

逮捕されたのは37歳の会社員の男。神奈川県警に勤務する女性職員が4月頃から繰り返し被害に遭っていたことから、夫である警察官が、公休をとり妻の通勤に同行、男を犯行現場で取り押さえたそうです。

ネットでは「管轄の境を越えた美談」などと、妻を救った夫の行動を賞賛する声が上がっています。

警察官が、自分の家族の被害に対して警察官として逮捕を行うことはできるのでしょうか?また、犯行現場は東急東横線横浜駅だったことから警視庁勤務の夫の管轄外と思われますが、管轄外でも警察官が逮捕しても問題ないのでしょうか? 

よくよく考えるとちょっと難しいこの問題について、簡単に解説します。

●「警察官の職務執行」としての現行犯逮捕が可能と考えられる

結論からいえば、今回の逮捕は適法です。

今回のケースでは、1)休暇中の警察官が、2)管轄外で、3)妻を被害者とする痴漢事件について、現行犯逮捕している、3点について、逮捕が許されるのか疑問に思われる方が多いようですので、順に解説します。

まず1)の休暇中であることについては、退庁後に職務を行った警察官について公務執行妨害罪の成否が問題となった裁判例(東京高判昭和32年3月18日)で、

・警察官は、警察事務に関して一般的な権限を有し、退庁後といえども所属管内において事件の発生ある場合にはその権限を行使する職務権限を有する 

・本件行為が退庁後の事に属するからといって、執行権限がないのに行為に出たものということもできない

とされています。

この趣旨からすれば、休日であっても警察官の職務として現行犯逮捕が出来ると考えられます。

次に、2)の管轄外での現行犯逮捕である点ですが、警察法65条には

警察官は、いかなる地域においても、刑事訴訟法第212条に規定する現行犯人の逮捕に関しては、警察官としての職権を行うことができる。

という規定があります。

さらに、3)の警察官の妻を被害者とする事件であることは、実際に犯罪行為が行われている以上、特に問題になりません。

なお、そもそも私人による現行犯逮捕も認められています(刑事訴訟法213条)が、今回の場合には警察法65条に規定された警察官の職権としての現行犯逮捕が認められると考えられます。 (弁護士ドットコムニュース・弁護士/小倉匡洋)

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