6315.jpg
憲法は「権力という野蛮な動物」を管理するためにあるーー小林節氏が語る「立憲主義」
2015年08月08日 11時33分

70回目の終戦記念日を間近に控えた8月7日、東京弁護士会は戦後70年企画として「伝える 平和と憲法の意味」と題したシンポジウムを開催した。基調講演とパネルディスカッションには、憲法学者の小林節慶大名誉教授、元NHKアナウンサーでフリージャーナリストの堀潤さん、元日弁連会長の平山正剛弁護士が登壇し、「平和と憲法」について、それぞれの思いを語った。

70回目の終戦記念日を間近に控えた8月7日、東京弁護士会は戦後70年企画として「伝える 平和と憲法の意味」と題したシンポジウムを開催した。基調講演とパネルディスカッションには、憲法学者の小林節慶大名誉教授、元NHKアナウンサーでフリージャーナリストの堀潤さん、元日弁連会長の平山正剛弁護士が登壇し、「平和と憲法」について、それぞれの思いを語った。

●国民が「プロパガンダ」に利用されないために

堀さんは、ジャーナリストの立場から、戦争に向かう国家がプロパガンダ(政治的な宣伝)によって国民を利用する危険性を指摘。「無知であることと、無関心であることといった国民側の問題も、真摯に受け止めなければならない」と述べる。

「ナチスドイツは、『(第一次世界大戦で)失った誇りを取り戻すんだ』とプロパガンダ戦を展開した。きれいな音楽、きれいな風景、きれいな物語を発信して、ドイツ国民の支持を得て、彼ら(ナチス)は栄えていった」とナチスがドイツで支持された経緯に触れ、「同じ轍を踏まないために、私たち市民社会側が『自分たちでどう防御できるのか』ということをしっかり考えていかなければならない。そのために、メディアは、徹底的に情報を公開していかなければならない」と報道の役割を訴えた。

●憲法は「権力という野蛮な動物」を管理するためにある

議論は、衆議院を通過し、現在参議院で審議が続いている安保法案にも及んだ。

政府・与党の安保法案を「違憲」と批判する小林名誉教授は、仮に法案が成立したとしても、選挙によって事態を打開できると主張した。

「彼ら(自民党)に政権を与えたのは我々だ。その責任を取らなければならない」としたうえで、「安倍政権は、閣議決定で憲法解釈を膨らませた。こちらも、政権交代をして、閣議決定でもとに戻せばいい。成立した安保法案を廃止する法案を通せばいい」と訴えた。

また、「権力は人間が担うから誤作動をしかねない。憲法という道具を使って、権力という野蛮な動物を管理する位置関係にある。間違っても、権力者が憲法を使いこなして、国民をしつけるといったバカなことを言わせてならない」と立憲主義の意義を語った。

小学4年生のときに終戦をむかえ、戦争で2人の兄を失くしたという平山弁護士は「今、我々が平和の旗である憲法9条を下ろしたら、戦後70年間築いてきた平和、信頼を損なうことになる。我々はそう思っていなくても、近隣諸国からみれば、戦前のように、戦争を辞さない国になるのかと誤解される可能性がある。だから、絶対にこの旗を降ろしてはならない」と平和憲法の重要性を訴えた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る