毎年、春ごろになると道端にオレンジ色の花が咲いているのを見かけるようになりました。名前は「ナガミヒナゲシ」といい、4月から6月にかけて花を咲かせます。
一見、かわいい花に見えますが、実は厄介な外来の植物でもあります。
外来生物法で規定され、環境省が指定する「特定外来生物」や「生態系防止外来種」には該当しないものの、自治体では「見つけたら、駆除をお願いします」と呼びかけています。
どのような影響がある植物なのでしょうか。
●道路沿いにナガミヒナゲシが咲く理由
ナガミヒナゲシはもともと、地中海沿岸の雑草でした。1960年代に東京都内で野生のものが確認されたとのことです。
高さ20〜60センチに成長する1年草ですが、アスファルトの隙間でも育つ繁殖力の高さから現在では日本全国に広く分布しています
国立環境研究所の「侵入生物データベース」によると、道端だけでなく、牧草地や畑、山地などあらゆる場所に生息しています。「在来種や畑作物との競合」があることから、在来生物や在来植物に影響するとされています。
警戒されるのは、やはり、その繁殖力の高さです。1つの個体から15万粒もの種子が生産されます。大きさは0.6〜0.7ミリ程度ととても小さく、発芽しやすいという特徴があります。
ちょうど梅雨の時期に種子が生産されるので、雨にぬれた自動車のタイヤに種子が付着し、道路沿いに分布を広げてきたとされています。交差点の信号付近に特にナガミヒナゲシが多いのは、自動車が赤信号で止まった際に種子が落ちるからだそうです(農環研ニュースNO.90)。
●他の植物を抑制するナガミヒナゲシ
ナガミヒナゲシは、ただ繁殖力が強いだけでなく、在来の生物にさまざまな影響を与えると言われています。
農業環境技術研究所(現在の農研機構)のレポート(平成21年度研究成果情報第26集)によると、「ナガミヒナゲシはアレロパシー活性が強く、雑草化リスクが大きいので、広がらないようにする必要があります」とあります。
アレロパシーとは、植物が生成して放出する物質で、周囲の植物の成長を抑制したり、虫を忌避したりするなど、影響を与えるものです。
レポートでは、ナガミヒナゲシはこのアレロパシー活性が強く、「特定外来生物に指定されている植物に匹敵するか、むしろこれらを上回る高いリスク点数が得られました」と結論づけています。
そのうえで、次のように提言しています。
「未熟な種子にも発芽力があり、開花後の刈り取りは、かえって分布を広げることになるので、本種の蔓延を防ぐには、花茎が伸長する前のロゼット状態(図4左端)の時期に駆除することが重要です」
道路でも咲くナガミヒナゲシ(orca / PIXTA)
●どうやって駆除する?
こうしたことから、「特定外来生物」や「生態系防止外来種」にはあたらないものの、駆除を呼びかける自治体は少なくありません。
たとえば、新潟市の公式サイトでは、次のように駆除の手順を紹介しています。
・手がかぶれる恐れがありますので、直接触らないように気を付けてください。 ・軍手やゴム手袋を着用し、根から引き抜き、「燃やすごみ」としてお出しください。 ・「枝葉・草」の収集には出さないでください。 ・チップ化やたい肥化といった処理では種子が生き残り、分布域を拡大させてしまう恐れがあります。 ・株が多くて引き抜けない場合は、地上近くで刈り取ってください。果実が熟して上部にすきまができると種子が飛散します ・熟す前に果実を刈り取ると、繁殖抑制に効果があります。
また、ナガミヒナゲシは育てることを禁じられている植物ではありません。他の人が育てているナガミヒナゲシについての取り扱いにはご注意ください。