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ドローン「規制法」の必要性に賛同する弁護士たちーー自民案には「短絡的」との批判も

小型の無人飛行機「ドローン」をめぐる事件や事故があいついでいることから、ドローンの使用を規制しようという動きが国内で起きている。


現行法では、高さ250メートル未満の低空を飛ぶ場合であれば、原則として、ドローンは許可などを取らずに自由に飛ばせるものと考えられているため、新たな規制立法を求める声があがっているのだ。


●官邸屋上でドローンが見つかった事件は注目を集めた


今年4月下旬、首相官邸の屋上でドローンが見つかった。この事件では、福井県の男性が威力業務妨害の疑いで逮捕され、ドローンの名前を世間に深く印象づけた。さらに5月上旬には、長野市の善光寺の行事中にドローンが境内に落ちるという事故が起きている。


こうした状況を受けて、東京都はこのほど、現行の条例にもとづいて、すべての都立公園と都立庭園でドローンを飛ばすことを禁止した。また自民党は5月中旬、国会議事堂や首相官邸、最高裁判所、皇居など、国の重要施設の敷地と周辺約300メートル以内の上空を、ドローンの飛行禁止区域とする法案をまとめた。


安全面や警備上の懸念が指摘されているドローン。一方で、さまざまな用途が見込める最新の技術革新にブレーキをかけるべきではないとして、性急な規制に反対する声もあがっている。


はたして、新しい法律でドローンを規制すべきだろうか。それとも、規制する必要はないのだろうか。弁護士ドットコムに登録している弁護士に意見を聞いた。


●「新しい法律で、ドローンを規制すべき」という回答が8割以上


以下の3つの選択肢から回答を求めたところ、17人の弁護士から回答が寄せられた。


1 新しい法律で、ドローンを規制すべき→14票

2 新しい法律で、ドローンを規制する必要はない→2票

3 どちらでもない→1票


回答は、<新しい法律でドローンを規制すべき>が14票と最も多く、8割以上を占めた。一方、<新しい法律でドローンを規制する必要はない>が2票、<どちらでもない>は1票だった。


「規制すべき」という意見のポイントは、「これまでの法律で対応できないので、一定の規制は必要だが、技術革新を阻害しないように、最小限に抑えるべき」というものだ。自民党の案については「短絡的でいただけない」と批判する声もあった。


今回の回答のうち、自由記述欄で意見を表明した弁護士14人のコメント(全文)を以下に紹介する。(なお、掲載は、<規制すべき>→<規制する必要はない>の順番。<どちらでもない>のコメントはなかった)


●「新しい法律で、ドローンを規制すべき」という意見


【太田哲郎弁護士】

「飛行機やヘリコプター以外の物体による、空間利用というのは、全く新しい状況の出現と思われますので、空間利用についての国民的な合意を得て、特に、一般人に対する安全性の確保のために、明確な規制を行うべきであると思います。購入者を登録するのは当然として、利用するための資格・技能についても、規制を行うべきであり、飛ばすことのできる場所を、極めて限定的に、定めるべきです」


【鈴木崇裕弁護士】

「撮影によるプライバシー侵害、墜落事故による危害などが生じ得る以上、ドローンに対する一定の規制が必要とされること自体は間違いないでしょう。しかし、技術の発展を阻害するような過度の規制は望ましくありません。


既存の法律を解釈適用して規制することも可能だとは考えられますが、解釈には幅があるので、不適切な規制がされてしまうことも心配されます。なにをどのように規制するのか、新しい法律によって明確に規定したほうが良いでしょう。


拙速な立法に走らず、十分な議論がなされることを期待します」


【岡田晃朝弁護士】

「人や物への衝突事故、プライバシー侵害、その他、様々な危険が生じる可能性がありますので、一定の法規制は必要でしょう。


最新の技術革新にブレーキをかけるべきではないのはその通りですが、他の新技術であっても危険性に配慮した一定の規制はありますし、必要な限度での規制にとどまる限り、かえって、利用を促進させる可能性もあるでしょう。


利用の便宜と安全の確保の両面からの法規制を進めるべきでしょう」


【秋山直人弁護士】

「ドローンは、技術革新によって生まれた新しい成果物であり、従前の法規制では対応できない問題を生み出していますから、法規制自体は必要だと思います。ただし、有用性も明らかですから、規制は必要最小限とし、さらなる技術革新や普及の障害にできるだけならないよう、配慮すべきと思います。


なお、自民党の、『とりあえず首相官邸や国の重要施設の上空だけ早急に規制する』という発想は、短絡的でいただけないと思います」


【置塩正剛弁護士】

「状況によって検討の必要が出てくる可能性は否定しませんが、現状で拙速に規制するのもどうかと思います。


ドローンをどう定義するか、既存のラジコン飛行機やヘリコプターとどう区別するのか、一方で、どのような規制の必要があるのかなど、検討すべき点は多いので、当面は現行法の範囲内での規制を前提に、十分に議論を尽くすべきだと考えます」


【高谷滋樹弁護士】

「表題からすると、空を飛ぶ(飛ばせる)自由の議論になりそうですが、そもそも、空は、境界なく続く、公共的なゾーンです。私人が、排他的な権利を持つものではないし、表現の自由を支えるパブリックフォーラムにも該当しないでしょう。それよりも、ドローンが、常に落下する危険性をもつものと考えれば空から、突如、物体が落ちてくる危険性があります。その自由は、制約を受けてもやむをえないと考えます」


【上條義昭弁護士】

「国民の『自由』に関係するものについて、新しい法律を作って規制することについて『慎重さ』が強く求められるが、先日の首相官邸の上に落とされたドローンのようなものについては、『自由の濫用』と言える範疇の行為であるところ、既存の法律だけでは規制不十分な点があるので、新たに法律で規制することはやむをえないと考えます。


【居林次雄弁護士】

「時代に沿った法律を作るのがよろしいと思われます。新規立法で、便利性を減殺しないように配慮して、条文を最小限度の規制に絞るのがよろしいでしょう。特に刑罰は軽くするのが、基本です。役所の介入は、文化の発展を妨げるからです。弊害のない限り自由に飛べるように配慮することも必要でしょう。原則自由、例外禁止という基本で立法すべきです」


【大貫憲介弁護士】

「下に落ちて事故を起こす可能性がある以上、自動車並みの規制は必要です。法的責任追及のための登録制度、安全性能維持のための検定制度、事故による損害賠償のための保険制度等が必要でしょう。テロ防止を強調する議論は、根拠が薄弱である上、過度の干渉につながる恐れがあると思います。新しい技術を育てる姿勢も必要です」


【中井陽一弁護士】

「ドローンは、第三者の敷地の上空に容易に入れたり、第三者のプライバシーをのぞき見したりすることも容易な上、落下による事故などの発生も十分に考えられます。


そのような点からすれば、単に『玩具』の範疇にとどまらない可能性がありますので、たとえば番号を付して登録制にするなど、所有者が誰なのかがわかるような法整備が必要なのではないかと考えます」


【武山茂樹弁護士】

「規制の必要性がありますし、規制によってかえって技術革新を促進する可能性もあります。日本は、従来より国家の機密維持や安全保障が弱いと言われております。ドローンによって、国の重要な施設が害されることを防ぐべきです。


また、規制があるからこそ、例えば国の重要施設を回避して飛ばせるようなドローンが生まれる可能性があります。規制は必ずしも技術革新を阻害しないのです」


【岡本卓大弁護士】

「技術の発展の中で、落下やプライバシー侵害の危険等の現実の危険性も見えてきているのであれば、それに対する必要かつ合理的な法規制は必要でしょう。


ただ、国の重要施設と敷地の上空でドローンを無断で飛行させた人に対して刑罰を科すというような短絡的な立法は、方向性として疑問です。


明確な基準と規制の在り方等を、きちんと調査・検討したうえで、必要かつ合理的な内容の規制を立法すべきでしょう」


【梅村正和弁護士】

「土地の所有権は法令の制限内においてその土地の上下に及びます(民法207条)。つまり、他人の土地の上は、その土地の所有者の所有権の範囲ですから無断で通過することは原則できません。飛行機は、航空法などの法律による根拠があるから他人の土地の上空を飛ぶことができるわけです。


なので、法律の規制がない場合、ドローンは公道などの上しか飛べないのが原則であるはずです。ドローンの飛行を規制するためではなく、ドローンが飛行する根拠を与えるためにも法的規制が必要だと思われます」


●「新しい法律で、ドローンを規制する必要はない」という意見


【濵門俊也弁護士】

「今回の規制論議の発端となった、首相官邸の屋上で、小型の無人飛行機『ドローン』が見つかるという事件の総括もしないまま議論をすることに疑問がある。官邸は、まず2週間も不審物を発見できなかったことへの反省をすべきである。


また、現行法制でどこまで規制できるかの議論も乏しいように思える。ドローンは対象物としてあまりに小さいのであるから、国の重要施設と敷地においてはドローンを飛行できないようにする妨害電波を出す等の処置で対応できるのではないか」



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【編集後記】


<新しい法律でドローンを規制すべき>が14票と最も多く、8割以上を占めた。一方、<新しい法律でドローンを規制する必要はない>が2票、<どちらでもない>は1票だった。「規制すべき」という意見のポイントは、「これまでの法律で対応できないので、一定の規制は必要だが、技術革新を阻害しないように、最小限に抑えるべき」というものだ。


今後、自民党は法案を議員立法で今の国会に提出し、速やかな成立を目指していると報じられている。しかし、その案には「短絡的でいただけない」と批判する声もある。ドローンは技術や文化の発展につながるものであり、十分な議論がおこなわれることを期待したい。

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人気VTuberの不適切改変イラストをツイート、著作権侵害で開示命令 今後につながる判決

人気VTuber「兎田ぺこら」の不適切なイラストをTwitterに投稿したとして、所属プロダクションが起こした裁判で、東京地裁(國分隆文裁判長)は1月31日、著作権侵害を認め、プロバイダに投稿者の個人情報開示を命じる判決を言い渡した。

裁判所のサイトで公開されている判決文によると、匿名の投稿者がツイートした画像は、「兎田ぺこら」の動画を切り抜き、涙や縄の絵とともに、「【首吊り】Vtuber初!自殺配信」などの文字を付けて、YouTube動画のサムネイルに見立てたものだ。

VTuberの画像と動画の権利をもつプロダクション「ホロライブ」(カバー社)は、こうした投稿が著作権(複製権・公衆送信権)の侵害にあたるとして裁判を起こしていた。

東京地裁の判決は、「兎田ぺこら」が自殺の様子をYouTube配信するような表現の投稿が、ホロライブの公衆送信権などの著作権を侵害するものと指摘した。また、キャラクターの自殺を描いた画像は、ホロライブのコンテンツ二次創作ガイドラインで禁止される「暴力的な表現」に該当するものであり、動画の利用許諾があったとは認められないとしている。

インターネットで検索すると、判決で権利侵害が認められたものではないかと思われる画像が確認できた。

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労働者協同組合で働いていた女性(当時51歳)が2018年にくも膜下出血で亡くなったのは、長時間労働などが原因だったとして、八王子労働基準監督署が労災認定した。認定は2023年3月2日付。遺族が4月24日、都内で記者会見を開いて公表した。

遺族側によると、女性が勤務していたのは「ワーカーズコープ・センター事業団」(東京都豊島区)。労働者協同組合は、労働者自らが事業に出資し組合員となり、その意見を反映しながら事業を運営していくもの。2022年10月には、労働者協同組合法が施行された。

女性の夫は会見で「労働者協同組合は、経営が1番になってしまうと、今回の妻のように、労働者の労働環境に関して、ないがしろになってしまうことがあると思います。労働者自身が輝く働き方を実現するのであれば、労務管理をきちんとして安心して働ける職場にしてください」とうったえた。

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その一人、富山県舟橋村に移住して5年目の岡山史興氏(38)は、小学1年生の我が子を納得して通わせられる学童保育がなかったことから、「だったら自分で作ろう」と思い立ち、クラウドファンディングを実施し、2022年12月、無料の学童保育を開設した。

「あてのない青い鳥探しをするよりも、自分たちで自分たちの住む場所をよくしていくアクションを取りたいと考えました」という岡山氏。移住者としての挑戦について詳しく話を聞いた。(ライター・和久井 香菜子)